第412回月例会
2021年04月09日(金) 於:Zoomによるオンライン開催
京都大学大学院 工学研究科 材料科学専攻 生体材料科学分野 教授 沼田 圭司 氏
「クモ糸や天然ゴムから学ぶ高分子設計」
(講演概要) クモなどの一部の生物種が生産するシルクタンパク質は、ベータシート構造をはじめとした特徴的な二次構造を周期的に形成することで、特異的な力学物性や生物学的特性を発現する。クモの糸、特に牽引糸と呼ばれる糸は、その軽量かつ強靭な物性から、高強度構造材料など幅広い分野への応用が期待されている。次世代型の材料として期待が膨らむ一方で、その紡糸機構は未だ明らかになっておらず、クモの糸を人工的に紡糸する技術が効率的に開発されない要因の一つに挙げられている。このような科学的・社会的背景から、クモ糸の形成過程におけるシルクタンパク質の構造変化を明らかにし、クモ糸の紡糸機構を解明することは、人工的なクモ糸の開発や、有機溶剤を使わない環境低負荷型の加工プロセスの実現に向けて非常に重要な課題である。本講演では、最近の進捗を踏まえて当該の研究成果について紹介する。